1 出エジプト記20章に記される「十戒」は、「主の祈り」、「使徒信条」と並んでクリスチャンに
とってとても大切な文書であり、キリスト教の三要文と呼ばれます。十戒は「戒め」という
イメージが強いため、敬遠される傾向にありますが、その本質を知るならば、この十戒も
また神の恵みの言葉であるとわかります。
2 十戒にはまず序文(20:1~2)があります。序文ですが、十戒の意味を考える上ではとて
も大切な箇所です。そこには、これから十戒を与えようとしているのが、恵みによってイ
スラエルの民を救い、解放した神であることが明らかにされています。
①十戒とは、神が上から目線で押し付けた規則ではなく、エジプトの奴隷から解放された
イスラエルの民がこれからどのように歩むべきかという道筋を教える言葉なのです。キ
リストの十字架により、罪の奴隷から解放されたクリスチャンにとっても、この十戒は
同じ意味を持っています。十字架の恵みに基づいて十戒に聴き、救いにふさわしい歩み
を志す者となりましょう。
②十戒とは、神が民に「わたし」と「あなた」の関係で語りかけておられる、愛の言葉です。
天地万物の創造主にして永遠の神が、十字架の愛をもってまずあなたを愛し、その上で
十戒という愛の応答を求めておられるのです。
3 マルコ10:17~22には、一人の富んだ青年とイエスの出会いが記されています。十戒を知
り、実際に守っているという青年に、イエスは十戒という鏡に映る彼の心の深淵を示しま
した。その時に見えてきたのは、青年が本当に頼りにしているのは神ではなく富であった
こと、そして彼が立っていたのは自己義であったという事実でした。十戒を完全に守れる
人は、誰もいません。皆が罪人です。しかし自分の罪を認め、十字架の贖いを信じる人は
その信仰のゆえに赦されます。その赦しの後に、神はあなたにこの十戒を与えておられま
す。解放の言葉、愛の言葉である十戒に聴き、救われた者として神の導きの下、なおも歩
み続けましょう。