1 第十戒には、これまでと異なる点があります。それは「行い」についての戒めに留まらず、
人の「心の内」にまで踏み込んでいる点です。神はみ言葉を通し、しばしば人の心に光を照
らし、問題となっている罪を浮き彫りにされます。それは根本にまで手を伸ばし、造り変
えようとなさるからです。
2 第十戒が光を当て浮き彫りにしているのは、「貪りの罪」です。部下の妻を貪ったダビデが
そうであったように、嘘、盗み、姦淫、殺人等の罪は全て貪欲から生まれています。「罪の
スイッチ」のような貪欲の根本にあるのは、人が神から離れ、自分が獲得した富や力に頼っ
て生きようとする自己中心性です。神はこの第十戒を通して「あなたは本当に神を神として
いるか。神の恵みに生きているか。」と問うておられるのです。
3 どのようにして貪欲から解放されて生きることができるでしょうか。
①「死に直面することによって」⇒誰にも等しく訪れる死を前にするならば、どんな人も本
当に大切なものに否応なく気づかされます。「愚かな金持ちの譬え(ルカ12:13~21)」に
あるように人はこの世の何物も死の向こう側に持っていくことはできません。あなたは
終わりある生を、今どのように生きているでしょうか。真の神を信じ、豊かに与えてく
ださる神に倣う生き方こそ、真に人間らしい生き方なのではないでしょうか。
②「主の恵みに満ちる信仰によって」⇒幾度祈っても「肉体の棘」が癒されぬ中、パウロは「わ
たしの恵みはあなたに十分である」とのみ言葉を聴き、主に満ち足りる信仰を抱きまし
た(Ⅱコリント12:9)。この世の如何なる物も壊れた水瓶のようで、あなたの心を満たす
ことはありません。ただ主なる神のみが、あなたを真に満たすお方なのです。いつも神
の恵みは、信じるあなたに十分注がれています。この信仰を握り、歩みましょう。